ウクライナ検察総長室は、国際的なハッカー集団のメンバーから押収した830万ドル超相当のUSDTを、資産回収機関「アーマ(ARMA)」の管理下へ移管したと発表した。押収した仮想通貨が実際に国家管理へ移された、ウクライナで初の事例だと同室は声明で述べた。
ARMAの正式名称は「資産の発見・追跡・管理のための国家機関」であり、刑事事件で押収された財産を管理する。今回の移管は裁判所命令に基づくもので、国家捜査局(SBI)の捜査を経て実施された。移管額はウクライナ・フリヴニャ換算で約3億7,200万フリヴニャに相当するとクラフチェンコ検察総長が述べた。
ただし、ARMAによる管理はあくまで資産の「保管」であり、「所有権の移転」ではない。USDTはARMAが管理するウォレットに置かれているが、正式な没収には有罪判決が必要であり、ARMAが仮想通貨を帳簿に計上した前例はない。
捜査当局によると、今回の対象となったハッカー集団はヨーロッパおよびアメリカの個人・企業にサイバー攻撃を仕掛け、機密データを窃取した上で身代金を要求していた。得た資金はウクライナ国内で不動産・自動車・高額資産に換金して資金洗浄していたとされる。
被害総額は1億ドル超と当局が推計しており、組織の主犯格を含む容疑者4人が拘束・勾留中だ。押収資産の総額は1,110万ドル超に上り、住宅・アパート・自動車・現金100万ドルおよび今回の仮想通貨が含まれる。
ウクライナは2022年に仮想通貨を合法化しており、現在はEU基準に沿った課税・規制法案を議会で審議している。同法案は昨年の第一読会を通過した。
チェイナリシスのデータによると、2024年半ばから2025年半ばにかけてウクライナが受け取った仮想通貨取引量は2,063億ドルに上り、ヨーロッパ第4位だ。
また、公務員が申告・保有するビットコインの総額は28億ドルに達するとされ、政府が仮想通貨準備基金の創設を検討しているとの報道も現地メディアから出ている。今回の移管は、米国が刑事・民事没収資産で戦略的仮想通貨準備を構築する方針と類似したアプローチだ。
検察総長室は声明で「現代の犯罪はとうの昔にデジタル空間へ移行した。われわれは今後も取り組みを継続する」と述べた。