6月20日の「JPYC × エックスウィンが語る早朝ラジオ 」では、Move to Earnの次のステージについて話が広がっていました。印象的だったのは、単に「歩いて稼ぐ」仕組みの話で終わらなかったことです。
Move to Earnは、一時期Web3の中でも大きな注目を集めました。NFTのスニーカーを持ち、実際に歩くことでトークンを獲得する。暗号資産やNFTに詳しくない人にも伝わりやすく、当時は「歩くだけで稼げる」というわかりやすさが多くの人を引きつけました。
価格が上がった、下がったという話だけで見れば、Move to Earnは過去のブームとして整理されてしまうかもしれません。しかし、スペースで語られていたのは、その先に残ったものです。稼ぐために歩き始めた人たちが、今も歩く習慣を持ち、仲間とつながり、地域との接点まで生み出している。この部分にこそ、次の可能性があるように感じました。
「歩く理由」をつくることの価値
Web3のサービスは、どうしても画面の中で完結しがちです。ウォレットを接続し、トークンを受け取り、マーケットを見る。もちろん、それも重要な体験です。しかしMove to Earnが面白かったのは、ユーザーを画面の外へ連れ出したことでした。
最初は報酬のためだったとしても、歩くことが続けば生活のリズムが変わります。雨の日には歩ける装備を整え、車で行ける場所にもあえて歩いて行く。近所の道を覚え、季節の変化に気づき、同じように歩いている人と話が合うようになる。これは単なるアプリ利用ではなく、行動の変化です。
人は健康に良いとわかっているだけではなかなか続けられません。けれど、そこにゲーム性や報酬、仲間との会話が加わると歩く理由が生まれます。Move to Earnの本質は、もしかすると「歩いて稼ぐ」ことそのものではなく、日常の中に街へ出る理由をつくったことだったのではないでしょうか。
街を歩く行動は、すでに社会実装され始めている
この視点で見るとMove to Earnに近い発想は他の領域にも広がっています。
たとえばTEKKONは、街を歩きながらマンホールや電柱などを撮影し、そのデータをインフラ管理に役立てる位置情報ゲームです。普段なら見過ごしていた設備が、ゲームの対象になり、街の状態を記録する情報になります。ユーザーは遊びながら参加しているだけでも、結果として社会インフラの維持に関わることになります。
ごみ拾いを記録するPirikaも近い考え方です。ごみ拾いは大切だとわかっていても、一人で続けるのは簡単ではありません。しかし、拾ったごみを記録し他の人の活動が見えるようになると、自分の行動が地域の中でどう積み上がっているのかがわかります。善意に頼るだけではなく、活動の見える化によって続ける理由をつくっている点が重要です。
FixMyStreet Japanのように、道路の破損や街灯の故障、不法投棄などをスマホで共有する仕組みもあります。街の課題は行政だけが見つけるものではありません。そこに住む人、通勤する人、散歩する人が気づき、共有することで、地域のメンテナンスに参加できるようになります。
これらの事例に共通しているのは、人が街に出る行動を社会に役立つ情報へ変えていることです。歩くこと、見ること、記録すること。その一つひとつは小さくても集まれば地域の状態を知るための大きな手がかりになります。
防犯と相性のいい「異変に気づく」仕組み
スペースの中でも、防犯との接点は面白いテーマとして出ていました。実際、自治体の防犯啓発でも、買い物や犬の散歩、ジョギングのついでに子どもや地域を見守る「ながら見守り」の考え方があります。日常の行動に少しだけ見守りの視点を足すという発想です。
ここにMove to Earnや位置情報アプリの仕組みを重ねるなら、重要なのは「不審者を探す」方向にしないことだと思います。個人が誰かを追いかけたり、直接注意したりする仕組みにすると、危険もトラブルも増えます。むしろ向いているのは、地域の環境変化に気づく仕組みです。
たとえば、街灯が消えている道、夜になると極端に暗い公園、見通しの悪い通学路、壊れたフェンス、放置された自転車やごみが増えている場所。こうした変化は地域の安全に関係します。歩く人たちがそれを見つけ、写真やコメントで共有できれば、犯罪を直接防ぐというより、犯罪が起きにくい環境づくりに貢献できます。
具体的にはアプリに地域見守り用のモードを用意し、参加者は自治体や防犯協会、警察署と連携した地域コミュニティに登録する。活動中は腕章やステッカーなどで、見守り活動の一環で歩いていることを周囲に伝える。夜に歩いている人が逆に不審に見えてしまう問題を避けるためにも、地域側に認知される仕組みは必要です。
一方で個人のリアルタイム位置を公開する必要はありません。むしろ、歩行履歴は時間を置いて集計し、個人が特定されない形で地域の見守り状況として表示する方が安全です。報告対象も、人ではなく環境に寄せるべきです。街灯、道路、公園設備、通学路の死角など、地域の安全に関わる場所を中心に記録する。事件性があるものはアプリ内で抱え込まず、既存の通報窓口につなぐ。この線引きがあって初めて安心して参加できる仕組みになります。
地域コミュニティづくりにもつながる
防犯やインフラ点検というと少し堅く聞こえますが、本当に面白いのは、そこから地域のコミュニティが生まれることです。
歩く活動は参加のハードルが低いです。特別なスキルがなくても始められますし、長時間拘束される必要もありません。子育て世代も、高齢者も、普段あまり地域活動に参加していない人も、自分の生活に合わせて関わることができます。
たとえば、月に一度だけ地域のウォーキングイベントを開き、参加者が商店街や公園、通学路を歩きながら気づいたことを記録する。終わった後は近くのカフェや商店で交流する。地域の店舗が参加者に小さな特典を出せば、街を歩くことが地域回遊にもつながります。ここに参加証明や活動履歴のような仕組みを加えれば、継続する楽しさも生まれます。
Web3を使う場合も、暗号資産を前面に出しすぎる必要はありません。むしろ相性が良いのは、参加の記録や貢献の可視化です。どの地域で活動したのか、どのイベントに参加したのか、どのような記録を残したのか。そうした履歴がバッジやポイントとして残れば、単なるボランティアでは届きにくかった人にも参加の入口を作れるかもしれません。
地域活動は、一部の熱心な人に負担が偏りやすいものです。だからこそ、ゲーム性や小さな報酬、仲間とのつながりによって、気軽に参加できる入口を増やす意味があります。Move to Earnが生んだ歩くコミュニティは、その入口を考えるうえで大きなヒントになります。
「稼ぐ」の先に残るもの
Move to Earnは、「歩いて稼ぐ」という言葉で広がりました。そのわかりやすさがあったからこそ、多くの人が参加したことは間違いありません。
ただ、これからの可能性を考えるなら、稼ぐことだけを中心に置くのは少しもったいないと思います。歩くことで生活が変わり、街を見る目が変わり、地域の人とつながる。その行動がインフラの点検や防犯、災害時の情報共有にも広がるなら、Move to Earnは一過性のブームではなく、地域参加の仕組みに近づいていきます。
Web3の価値は、価格だけではありません。人の行動を記録し、貢献を見えるようにし、コミュニティの中で参加の履歴を残すことにもあります。
スペースで語られていた「歩く人たち」の話は、単なる健康習慣の話ではありませんでした。街に出る人が増えることは、街を知る人が増えることでもあります。その行動をどう地域の価値につなげるか。そこにWeb3が生活の中に残っていくためのヒントがあるのではないでしょうか。
※本記事は、公開情報をもとに暗号資産・ブロックチェーン関連ニュースを整理した一般的な情報提供であり、特定の暗号資産の売買を推奨するものではありません。


