米CNBCの報道によれば、米国銀行協会(ABA)のロブ・ニコルズ会長兼CEOは5月10日、加盟銀行のCEO宛に書簡を送付し、米上院銀行・住宅・都市問題委員会が5月14日に予定する仮想通貨市場構造法案「クラリティー法」のマークアップ採決を前に、上院議員への即時の働きかけを要請した。
ニコルズCEOは現行の法案文言ではステーブルコインに対する「利回り類似報酬」を十分に阻止できず、銀行預金の流出による経済成長と金融安定への脅威となると指摘した。
ニコルズCEOは書簡で、加盟銀行CEOおよびその従業員に対し、ABAのグラスルーツ・ウェブサイトを通じて州選出上院議員へ書面を送付し、または電話による働きかけを行うよう求めた。5月8日には、ABA、米銀行政策研究所、コンシューマー・バンカーズ・アソシエーション、フィナンシャル・サービシズ・フォーラム、独立コミュニティ銀行協会、ナショナル・バンカーズ・アソシエーションの計6団体が連名で、銀行委員会のティム・スコット委員長およびエリザベス・ウォーレン筆頭民主党議員に書簡を送付し、利回り条項の追加修正を求めていた。
論点となっているのは、トム・ティリス上院議員とアンジェラ・アルソブルックス上院議員が5月2日に公表した妥協案である。同案は「対象当事者」が米国顧客に対し、ステーブルコイン保有を理由に利息や利回りを支払うこと、または利付銀行預金の利息支払いと経済的・機能的に同等な支払いを行うことを禁止する一方、適法な活動に紐づく「活動連動型または取引連動型の報酬およびインセンティブ」は禁止対象外としている。
コインベースの最高法務責任者ポール・グルワル氏はこの妥協案を支持しており、銀行業界6団体は文言が不十分で抜け穴を残すと反論している。
上院銀行委員会は今週14日に正式会合を開きクラリティー法のマークアップを実施する。同法は米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の間でデジタル資産の監督権限を分割し、証券かコモディティかの分類を明確化、仮想通貨取引所およびステーブルコイン発行体に新たな開示要件を課す内容である。
同委員会は1月にもマークアップを予定していたが、ステーブルコイン報酬の扱いを巡る懸念からコインベースが支持を撤回し、開催直前に延期された経緯がある。
ホワイトハウスの仮想通貨顧問パトリック・ウィット氏は5月11日、X上で2月にニコルズCEOら銀行幹部を協議に招いたが拒否されたと反論した。米ポリティコの記者ジャスパー・グッドマン氏の報道によれば、民主党側はクラリティー法本体への倫理条項組み込みを譲らない方針で、ルーベン・ガレゴ上院議員が4月29日の党内会合で当該方針を示唆し、キルステン・ジリブランド上院議員は先週の「コンセンサス 2026」で倫理条項を含まない法案に民主党議員は賛成票を投じないと明言した。
背景には、ドナルド・トランプ大統領一族の仮想通貨関連事業からの価値を少なくとも14億ドルと推計する米ブルームバーグの報道などがある。
ホワイトハウスのデジタル資産大統領顧問委員会パトリック・ウィット事務局長は「コンセンサス 2026」で、クラリティー法の成立目標日を7月4日の米国独立記念日に設定し、6月中の上院本会議可決および下院との調整というタイムラインを示した。同氏は特定個人や役職を標的とする倫理条項は受け入れない方針を示している。
注視点は、5月14日のマークアップで倫理条項がどう扱われるか、銀行業界団体の利回り条項修正要求が反映されるか、7月4日の成立目標スケジュールが維持されるかの3点となる。


