米大手ベンチャーキャピタルa16zの共同創業者、マーク・アンドリーセン氏は6日、Xへの投稿で「AIによる雇用喪失」という言説はすべてまやかしに過ぎないと強く反論した。AIは生産性を大幅に向上させ、それが需要の急拡大を呼びこむことで、結果として雇用はむしろ大きく増えると主張している。
アンドリーセン氏はその主張の根拠として、ビジネスインサイダーが報じたテクノロジー業界の求人データを挙げた。4月4日公開の記事「ソフトウェア関連の求人数が今年急増、AIへの懸念を覆す」では、ソフトウェアエンジニアの求人件数は2023年半ばから約2倍の67,000件超に増加し、過去3年間で最高水準に達したとしている。
また、アンドリーセン氏は、3月30日に公開されたポッドキャスト「20VC」のインタビューで、AIが大規模な雇用削減を引き起こしているという懸念を一蹴し、次のように語った。
アンドリーセン氏は、AIが原因とされる多くの人員削減について、パンデミック期の過剰採用の是正と、急激な金利上昇を受けた財務戦略の見直しが本来の要因だと主張した。また、新卒者の就業難については、過去の過剰投資・過剰採用の反動による採用抑制に加え、卒業生のスキルセットと市場ニーズとの間に生じている「ミスマッチ」を主な要因に挙げた。
一方で、AIへの事業転換シフトに伴う人員削減は現実のものとなっており、大手テック企業による大規模な解雇報道も後を絶たない。
こうした現実との乖離から、アンドリーセン氏の楽観的な展望に対しては、SNSを中心に数多くの異論や反発が巻き起こっている。
Xユーザーの「Common Sense Investor」は、「AIはデフレ要因であり、雇用市場の悪化をさらに加速させる」と反論。金融・保険業界における求人数の劇的な減少を指摘した。12月の求人数は13万4,000件と、2012年以来の低水準を記録。これは2022年のピークから約75%(41万件)もの激減にあたる。同セクターの求人率は1.9%にまで急落しており、世界金融危機の余波が残る2010年2月以来、最低の水準に沈み込んでいる。
企業のAI導入拡大に伴い、高学歴・高収入のホワイトカラー職の削減が注目される一方で、AIインフラを支えるデータセンター関連職の雇用が急増している。
グーグルの採用担当責任者(VP)ブライアン・オン氏によると、同社は米サンフランシスコ・ベイエリアのソフトウェアエンジニアだけでなく、世界各地のデータセンターにおいても大量採用を進めているという。具体的には、AIインフラの根幹を担うデータセンター技術者、運用担当者、プログラム/センターマネージャーといった職種が対象だ。
特筆すべきは、これらの職種の多くでコンピュータサイエンスの学位が必須とされていない点だ。一部の職種では学位がなくても実務経験があれば応募が可能となっている。それでも、これらの職種の給与水準は極めて高く、年収は10万ドルから20万ドル(約1,500万〜3,000万円)規模での募集も珍しくない。
勤務地は米国にとどまらず、日本やオランダなど世界各地に広がっている。また、グーグルのみならず、アマゾンや エクイニックス、ヴァンテージ・データ・センターズなどの業界大手も、データセンター運用関連人材の獲得に積極的に乗り出している。
この背景には、AIインフラの構築・維持に不可欠な「現場作業」の価値が再び高まっているというトレンドがある。特に技術者や空調設備オペレーターといった職種は、AIを物理的に稼働させるために必要不可欠であり、ロボットやAIでは代替できない「人間の判断」が求められている。